ワンダDVD〜地獄篇〜

一夜の半ば、私の眼前には一つの映像が流れていた。


「私を導く師よ、あなたがもし私の心中をお察しなら
どうかこの先へ進まずに。
私の想像が正しければ、この先に見えるは
信者にとって地獄そのもの。
見る者耐えがたい屈辱と嫌悪に支配され長い夜を過ごす事必死。」


「君の本音を私が取り違えていないなら、
君の精神は、卑怯な恐れに打ちのめされたのだ。
目に映るもの全て受け入れなくてはならないのは、
我ら信者全てが生涯逃れる事の出来ない運命。
すわ時は来た。今こそ両の眼を開き、
我と我らの地獄に立ち向かう時ぞ。」



「教えられよ尊師、教えられよ。
私の耳に聞こえるは、私が生涯をかけて愛し止まない唯一の歌。」


「いかにも、君が知りえるこの歌の元の主は、
永く地中海を支配する者、美の伝道師。
我々の祖先が未知の実を手に取り、やんごとなき方の逆鱗に触れたがごと、
身の丈に合わぬ一時の感情から、葉に火を付けその禁断の煙を吸い込んだ者。
残るはただ色欲に溺れた小人。」


「しかし眼前に写るは違う四人。」


「それは元の持ち主とは時代も産土も異にする三人。
それを束ねるはその昔歌の主の一だったが、
今は無類の好色と巨大な乳房に挟まれすっかり変わり果てた、田浦の陽光に焼き尽くされし者。
我らの歌を奪いし者ども、動き無く、表情無く、立ち、或いは坐り、ただ声のみを模倣する。
それに送られる賞賛の声援はげに皆無に同じ。」



「導者よ。これ以上この洒落を続けるは我が身の破滅を招くに等しい。」


「君が求めるなら中絶しよう。」


そして私は仰ぎ見た。飯田のハロプロアワーを。
(ダンテ『神曲 地獄篇』より抜粋)
(資料:ワンダフルハーツライブDVD(FC限定))